私の実家じまい

山も田んぼもある田舎の物件は売れるのか?そんな実家じまいに取り組んだ1年間の記録

2月28日 井戸水が出ない

実家への帰省は自分一人だけだった。

新幹線の車内で墓じまいについて妻とLINEで情報交換をした。妻がネットで墓じまい専門店を調べ、電話もかけて情報をいろいろと集めてくれていた。

実家に着いてみると、1週間前に降った雪もだいぶん融けて、覚悟していた雪かきもさほどしないで済んだ。しかし、想定外の事態が待っていた。

実家に戻っていつも最初にするのが、井戸のポンプの電源を入れることだった。実家には上水道はないので、井戸の水をポンプアップして使っている。

実家を留守にするときは、省エネのこともあり、ポンプの電源を切っている。特に冬場は水道管が凍結するので、蛇口を開放して中の水を出し切り、井戸の水位を下げておく。温水器も水抜き栓を開放して中の水を出し切る。水抜きが不十分だったがために、台所の湯沸かし器は、過去に凍結、修理、凍結、修理を2度繰り返したことがあった。3度目に凍結したあとは、修理を放棄していた。

そういうことがあるので、留守中はポンプの電源を切っているので、帰省したら真っ先にポンプの電源を入れ、蛇口から水が出ることを確認する。

しかし、今回は蛇口をひねっても水が出てこなかった。始めのうちはちょろちょろっと出るが、しばらくするとポタッ、ポタッ、となる。

井戸の水が凍結することがあるのだろうか。初めて経験することなので、原因がわからない。

とにかく水が出ないことには水を飲むこともお湯を沸かすこともできない。料理は始めからするつもりがなかったが、食事の後に食器を洗うこともできない。顔を洗うこともトイレを使うこともできない。

私は横浜にいる妻にLINEで状況を報告した。妻はネットで調べて、いろいろな可能性を教えてくれた。冬場は凍結して水位が下がっている可能性、ストレーナーが目詰まりしている可能性などがあるようだ。しかし、いずれも専門業者に依頼しないと、手に負えない。私は妻に相談した。

「トイレが使えない。どうしよう?」

「川の水をバケツに汲んで流すのよ」

「飲み水は?」

「隣のHさんのお家にもらいにいくのよ」

妻は、かって実家の井戸の水が出なくなったことがあって、何度も水汲みに行った経験があった。

私は妻の助言に従った。早速、隣りの家といっても100mくらい離れているが、幼馴染みのHさんの家に行って、飲み水を分けてもらうことにした。トイレは実家の裏を流れる川の水をバケツに汲んできて使った。

この作業を1週間毎日のように繰り返した。気持ちが高ぶっていたせいか、さほど重労働とは感じなかったが、1週間後には左の肘がテニスエルボーのように痛み始めていた。