実家の維持管理には毎年結構な費用が掛かっていた。
帰省費、税金、草刈り代、浄化槽の点検費用など。
その中で最も大きかったのが帰省費だった。
年2回は帰省していた。状況によってはそれ以上帰省することもあった。夫婦で帰省すると経済的にも大変なので、そろって帰省するのは1回にしていた。移動には新幹線とレンタカーを使用していた。レンタカーは、JRのローカル線があった頃は借りることもなかったが、廃線になってからは必須になった。日程によってはホテルに泊まることもあった。それらの費用が細かいものも合わせると年間10万円~20万円くらいになっていた。
次に大きいのが税金。固定資産税と不在地主に対する家屋敷税を加えて6万円。
草刈りを年3回程度シルバーセンターに依頼していた。合計で6万円くらい。
自分でも帰省したときに草刈りをするが、雑草の成長スピードが速いので、その合間に地元のシルバー人材センターに依頼した。雑草を放置すると、イノシシの隠れ蓑になって、田んぼが荒らされる。それを防ぐ上でも必要だった。
ほかに浄化槽の点検費用として2万円。
実家のある地域には下水道が整備されておらず、各戸に浄化槽を設置している。その点検整備が法律で義務付けられていて、3か月ごとの点検と年次ごとの点検を専門業者に依頼していた。空き家でほとんど使用しないため、汚水の流入が少なく、かえって不具合を生じやすい。3年前、水位が異常低下して、漏水と診断された。役場から改善措置を求められ、点検整備のため20万円かかった。
電気代、ガス代も最低限の基本料金がかかっていたが、母の口座から自動引き落としされていたから、実質的な負担はなかった。
以上のほか、臨時に発生する諸々の費用が結構大きかった。山の木が邪魔で切ってほしいと言う依頼もたびたびあった。そのたびに森林組合に伐採を依頼していた。経費を節減しようとシルバーセンターに依頼したこともあったが、山の斜面での伐採作業はあまりに危険で一度引き受けてもらったきり、二度目はなかった。
そのようなことで、毎年30万円前後の費用がかかっていた。
当然、妻は不満だった。
家計をやりくりして、毎年30万円を田舎用に出してくれていた。
しかし、いつまでも出せるものではない。仕事をやめて年金生活になれば、その余裕がなくなることは目に見えていた。