私の実家じまい

山も田んぼもある田舎の物件は売れるのか?そんな実家じまいに取り組んだ1年間の記録

9月12日 過去帳

実家の仏壇にはなぜか過去帳が見当たらなかった。

前回帰省したときにもさんざん探したが、見つからなかった。姉たちにも聞いてみたが、知らなかった。

過去帳を用意する必要があった。

自宅の仏壇には妻の両親の戒名を書いた過去帳があったが、さすがにそこに自分の先祖の戒名を書き加えるのは違和感があった。妻も同じ意見だった。

そこで近所の仏具店で新しく過去帳を購入することにした。

 

購入すると早速習字の練習を始めた。筆と硯と墨は妻が持っていた。

菩提寺の住職に戒名を書いてもらえないか頼んだが、あっさりと「自分で書いてください」と断られていた。

実家の仏壇の閉眼供養は10日後だった。それまでに戒名を書いて、一緒に供養してもらうつもりだった。

しかし、筆で書くのは簡単ではなかった。指がパソコンのキーボードやスマホのタッチに慣れ切っていて、筆の持ち方すら忘れている。筆先がやわらかくて書きにくい。始めはまっすぐの線を引くことから練習する。少し慣れて戒名の字を書いてみる。なかなか読めるような字にならない。戒名の数も多かった。初代から数えると全部で7人分あった。読み終わった新聞を広げて、真っ黒になるまで何度も何度も練習する。墨を磨るのも何十年ぶりだった。一週間ほぼ毎日のように練習して何とか読めるような字が書けるようになった。

「よしっ!これでいこう」

そう思って過去帳に書き始めることにした。

新聞紙と違って過去帳の紙質は滑らかだった。緊張が走った。「失敗はできない」と思った途端、字が曲がってしまった。