これまでお世話になってきた近所の人たちに、妻と一緒にお礼に回った。
寂しくなりますねと言ってくれる人、若い人が後に入るので好意的に受け止めてくれる人、さまざまだった。
親戚の叔母さんとは話しが弾んだ。いつの間にか2時間が経っていた。子どもや孫のこと、家のこと、地域のこと、コロナのこと、ロシアのこと、そして老老介護の心配。
「80才になるが足腰が丈夫で介護施設には入れそうもない。この調子では100才まで生きるかもしれないが、そのとき娘は80歳。100才の親を80の娘が介護することになるのか?」と。
他人事ではない。自分たちもいずれそうなる。
どう返事したらいいか答えが見つからなかった。
幼なじみのHさんとは短く言葉を交わした。
「いろいろとお世話になりました」
「さみしくなるよ」
「墓参りで年1回は戻ってくるから」
「うん」
「じゃあ、また」
車に乗り込み、実家を横にみながら故郷を後にした。