私の実家じまい

山も田んぼもある田舎の物件は売れるのか?そんな実家じまいに取り組んだ1年間の記録

2月20日 最終日程

一周忌法要を終えて横浜の自宅に戻ってきた。

売買契約の締結と代金の支払い、引き渡し、そして移転登記の申請を3月10日に行うこととし、その日程でよいか、買い手さんと不動産屋さんにLINEで打診した。

買い手さんからは、OKの返事がかえってきた。それとともに、「地元は大雪になっている」と教えてくれた。1年前も大雪が降ったことを思い出した。

少し遅れて不動産屋さんからも了解の返事があった。

念のため契約当日のことについて訊いた。

「契約当日、こちらから持って行かないといけないものは何ですか?」

「①権利証(登記済証)、②印鑑証明書1通、③実印、④本人証明書(運転免許証等)、⑤土地建物課税明細書です」

これまでに用意してきたものと齟齬はなかった。

「媒介手数料も当日の支払いですね?」

「はい、そうなります。請求書が事前に必要なら送りますが」

「わかりました。請求書は送ってもらわなくても大丈夫です」

2月15日 法務局での事前相談

一周忌法要を終えると、移転登記申請の事前相談のため法務局に向かった。

午後2時から30分間の時間をとっていた。

買い手さんとは法務局の玄関先で合流することにしていた。

確認したいことは3つあった。申請書の記載や添付書類に不足がないか、補足資料の要否、そして申請書類のホチキス留めのこと。移転登記申請は初めてであり、いろいろとチェックしてもらう必要があった。

あらかじめ準備していた登記原因情報をもとに売買契約の内容を説明した。「売買契約の締結はこれからです」というと、担当官は「まだ契約してないんですか?」と、拍子抜けした感じだった。今後変わるかもしれない契約書をもとにチェックしてもしょうがないと思ったのだろう。

申請書の記載では、よくわからずに「登記識別情報を提供することができない理由」のところにチェックを入れていたが、「登記済証を添付するならチェックを入れなくてよい」と指摘された。割り印の位置と捨印を押す箇所についても細かく指摘があった。

添付書類は、登記済証、登記原因情報のほかに、農業委員会の許可証、印鑑証明書、住民票、固定資産評価証明書、そして登記経緯説明書を添付するつもりだった。印鑑証明書と住民票は売り手と買い手の両方を添付するつもりだったが、印鑑証明書は売り手の分だけ、住民票は買い手の分だけでいいと言われた。押印も、私が実印、買い手さんは認印でいいということだった。

補足説明資料として登記経緯説明書を準備していた。もちろん添付が義務付けられているものではない。現在の土地の地番と登記済証の地番とが違っていて、その変遷が複雑なので、わかりやすく理解してもらうためにと思って作ったものだった。

登記済証だけで4冊。昭和38年に相続登記したときのもの、昭和50年に譲り受けた土地に関するもの、平成9年に登記漏れのあった分を相続登記したときのもの、そして平成13年に換地処分を受けたときのもの。その間に国土調査による合筆の登記、農地改良事業による分筆の登記があった。登記済証の地番と現在の地番とがどうつながっているか、模式図と一覧表で3枚にまとめていた。

それを担当官に見せ地番の変遷をざっと説明し、申請書に添付しようと考えていると言ったが、担当官はこれという反応がなく、どうでもいい感じだった。かなり時間をかけて作成してきただけに、拍子抜けした。

最後に、申請書類のホチキス留めについて尋ねた。

登記済証が4冊あり、それだけでも1センチくらいの厚さになった。そのほかの添付書類と申請書とをまとめてホチキス留めするのは難しかった。すると、担当官は「登記済証はホチキス留めしないで、透明なクリアホルダーに入れればいい」と教えてくれた。さらに、「登記済証は登記が完了したら申請人に返すから、綴じなくていい」と言った。

その言葉に、おもわず「えっ?」となった。

売買契約では登記済証を買主に引き渡すことになっていて、移転登記が終わったら売主に返すというのは一体どういうこと?

担当官が追い打ちをかけるように言った。

「移転されないで残った土地があったら、売主が登記済証を持っていないとまずいでしょ」

急に不安になった。

登記済証に載っている土地で所在の分からない土地がまだいくつかあった。

その確認が至急必要になった。

2月15日 一周忌法要

母の一周忌法要を行った。

コロナ禍でもあり、出席者は自分たち姉弟と親せきだけのごく少人数だった。

法要が終わった後の会食も控えた。

墓前で、実家を買い手さんに譲ることについて報告した。

姉と親せきにも買い手さんのことを報告した。

2月11日 引き渡しの日程

実家の引き渡しをいつにするか、買い手さんと相談した。

実家にはまだ私物が残っていた。一時的に帰省したときのための着替えや布団、食器、家電などだった。

売買契約の締結から引き渡しまでには間が空くと思っていたので、その間に処分するつもりだった。しかし、契約締結と引き渡しを同日に行うとなると、その前に処分しないといけない。

2月は積雪や降雪があるので、できれば実家に戻りたくなかった。母の一周忌法要も市内で行う予定にしていた。もし、実家まで戻るとなると、除雪や凍結のことを心配しないといけない。そんな状況の中で私物の処分はやりたくなかった。

妻の日程的な都合もあった。

それらを考慮して、3月の第2週でどうか、と提案した。

買い手さんもそれで了解してくれた。

2月10日 媒介手数料の支払日

今度は媒介契約の変更契約書をみて「アレッ」と思った。

媒介手数料を売買契約締結日に100%支払うことになっていたからだ。

売買代金が2回以上に分けて支払われる場合、媒介手数料を売買契約締結日に全額支払ってしまうと、残金が間違いなく支払われることについて、不動産屋は責任を負わないことになるのではないか?

ネットで調べてみると、媒介手数料の支払いは、売買契約締結日に50%、売買代金支払い完了日に残りの50%を支払うとなっている。

当初契約でもそうなっていたはずだが、気づいていなかった。

変更を申し入れるべきか、悩んだ。

残金の支払いに問題が生じた場合、不動産屋が責任を持たないとすれば、売り主である自分が買い主に督促をすることになる。そんなことができるだろうか?

しかし、その不安は杞憂だった。売買契約書の内容を読んでいくと、売買代金は売買契約締結日に100%支払うことになっていたからだ。

一般的に、売買代金の支払いは、契約締結日に手付として代金の一部を支払い、残金を後日契約で定めた日に支払うことになっている。

ところが、今回の売買契約では、手付けの支払いも中間払いもなく、一括して全額を契約締結日に支払ってもらうことになっている。売買代金が安いからというのがその理由だった。買い手側もそれで了解しているという。

つまり、売買契約を締結するその日に、代金の全額支払いと引渡し、移転登記申請が行われるということになる。

そうであれば、媒介手数料を売買契約締結日に全額支払うことは何ら問題ない。

不動産屋は、そのことを始めから見越していて、買い手さんもそれを承知していて、知らないのは自分だけだったのだ。

2月8日 売買契約書の様式

不動産屋から売買契約書の案が送られてきた。

違和感だらけだった。

契約書本体のほかに重要事項説明書がついていた。そのほかに、なぜか媒介契約書の変更契約書も同封されていた。

始めに違和感を感じたのは契約書の様式だった。

いきなり物件一覧から始まっていたからだ。

契約書といえば、普通は、前文、例えば「売主○○と買主○○は別記の物件の売買に関し以下の契約を締結する」から始まって、第一条へと続いていく。しかし、送られてきた契約書案は前文のようなものがなくて、いきなり「売買の目的物の表示」から始まっていた。以下、「売買代金、手付金の額及び支払日」「その他約定事項」などと続き、契約条項は最後だった。

「こんな契約書ってありか?」

よく見るとページのフッター部分に宅建業者の全国団体の名称とその様式番号らしきものが記載されている。不動産屋もその会員なのだろう。その団体の会員はみなこの様式でやっているとすれば、それを変えてくれというのは無理だろう。ここは黙って従うことにした。

 

土地の地番に記載ミスがあった。

物件の数が多いので、仕方ないといえば仕方ないが、毎回同じ個所を間違えているのはどうしてか。2か所修正してもらった。

 

手付金が「なし」となっていたので、念のため訊いてみた。

「手付金がなしとなっていますが、それが普通ですか?」

「本件の場合、一般的な住宅販売などと違い、次の買い希望者がストップされているので、契約時一括払いとなっています」

なるほど、そういうことか。

 

公租公課の納付の分担について訊いてみた。

「公租公課は何年度分を想定していますか?」

「令和4年分です。慣例として前年度分で計算し、令和4年分の額が決まってから調整します」

「分担の起算日はいつですか?4月1日ですか?」

「基準日は1月1日です」

「基準日ではなく、起算日のことを尋ねています。地元の慣例は1月1日と4月1日のどっちですか?」

「1月1日です」

「わかりました。1月1日で結構です」

 

境界の明示を規定した条文についても確認のため訊いてみた。

「今回売買対象の土地はすべて国土調査が行われていて、そのときに調査杭が打たれているので、この条文は該当しないと理解していいですか?」

「はい、それで結構です」

 

契約の締結日と代金の支払日、引渡日、移転登記の申請日は空欄になっていた。それをいつにするのか自分としても決めていなかった。

2月8日 地目変更の登記完了

先日申請した地目変更の登記の完了証が郵送で送られてきた。

申請書を送ってわずか1週間だった。

申請書を送った際に、法務局の担当者に「空き家バンクの登録案件で、買い手さんとの契約を急いでいる」と伝えてはいたが、こんなに早く処理してもらえるとは思っていなかった。役場の許可証を添付していたから、早く処理してもらえたのだろうか?墓地の地目変更を申請したときには「なかなか現場確認に行けなくて」と言っていたが、いつ行ったのだろう?

いずれにしても文句はない。