不動産屋から売買契約書の案が送られてきた。
違和感だらけだった。
契約書本体のほかに重要事項説明書がついていた。そのほかに、なぜか媒介契約書の変更契約書も同封されていた。
始めに違和感を感じたのは契約書の様式だった。
いきなり物件一覧から始まっていたからだ。
契約書といえば、普通は、前文、例えば「売主○○と買主○○は別記の物件の売買に関し以下の契約を締結する」から始まって、第一条へと続いていく。しかし、送られてきた契約書案は前文のようなものがなくて、いきなり「売買の目的物の表示」から始まっていた。以下、「売買代金、手付金の額及び支払日」「その他約定事項」などと続き、契約条項は最後だった。
「こんな契約書ってありか?」
よく見るとページのフッター部分に宅建業者の全国団体の名称とその様式番号らしきものが記載されている。不動産屋もその会員なのだろう。その団体の会員はみなこの様式でやっているとすれば、それを変えてくれというのは無理だろう。ここは黙って従うことにした。
土地の地番に記載ミスがあった。
物件の数が多いので、仕方ないといえば仕方ないが、毎回同じ個所を間違えているのはどうしてか。2か所修正してもらった。
手付金が「なし」となっていたので、念のため訊いてみた。
「手付金がなしとなっていますが、それが普通ですか?」
「本件の場合、一般的な住宅販売などと違い、次の買い希望者がストップされているので、契約時一括払いとなっています」
なるほど、そういうことか。
公租公課の納付の分担について訊いてみた。
「公租公課は何年度分を想定していますか?」
「令和4年分です。慣例として前年度分で計算し、令和4年分の額が決まってから調整します」
「分担の起算日はいつですか?4月1日ですか?」
「基準日は1月1日です」
「基準日ではなく、起算日のことを尋ねています。地元の慣例は1月1日と4月1日のどっちですか?」
「1月1日です」
「わかりました。1月1日で結構です」
境界の明示を規定した条文についても確認のため訊いてみた。
「今回売買対象の土地はすべて国土調査が行われていて、そのときに調査杭が打たれているので、この条文は該当しないと理解していいですか?」
「はい、それで結構です」
契約の締結日と代金の支払日、引渡日、移転登記の申請日は空欄になっていた。それをいつにするのか自分としても決めていなかった。