買い取り屋さんに来てもらって、査定してもらった。
高価なものがあるわけではなかった。
横浜に持ち帰ったレコードはすでに期待外れに終わっていた。
学生時代に買ったレコードプレーヤー、アンプ、スピーカーは、もとより高価なものではなかった。
ほかに盆暮れの贈り物や結婚式の引き出物など、未使用のまま保管されているものがたくさんあった。そのまま捨ててしまうのはいかにももったいなかった。
漆器の什器もあった。昔は家で葬式や法事を行っていたから、そのときに使用したものだった。一つずつ丁寧に包んであったが、長年使い込まれて擦りキズが目に付くようになっていたせいか、引き取ってもらえたものは少なかった。
思いもしなかったものを引き取ってもらえた。
いわゆるシニアカーという電動の車いすだった。母が生前中に乗っていたもので、乗らなくなって10年以上たっていた。バッテリーはとっくに上がっている。地元の販売店には引き取りを打診したが拒否されていた。しかし、市内では中古のシニアカーの引き合いがあるという。「エンジンキーがないか?」ということで大急ぎで家中を探して見つけ出し、何とか引き取ってもらうことができた。
惜しいことをしたのは石油ランプだった。蔵の2階に煤まみれのまま吊るされていた。アンティークなレストランなどで人気があり、1万円で引き取るという。もちろん異論はない。買い取り屋さんが蔵の中から持ち出してきて、入り口近くに置いていた。ところがそのそばを妻が通ったはずみに倒れ、「パリン」という乾いた音とともに、いとも簡単に割れてしまった。
そんなハプニングもあったが、それやこれやで買い取り屋さんが電卓をはじいて出した金額は3万6000円。思ってもみない金額で買い取ってもらえた。