閉眼供養が終わった後、きょうだい3人で遺品の整理を行った。
実家は母が住んでいたときのほぼそのままの状態だった。母が使っていた家具や衣類などのほか、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、自分たちが年に数回帰省した際に使用する衣類などもあった。空き家バンクで売りに出すには、不用品を処分していかないといけない。姉たちには、それぞれに思い思いのものを持って帰ってもらった。
片付けをしていると、蔵の中から金庫が出てきた。手提げ式の金庫だった。
中に一体何が入っているのか?ダイヤル式の金庫になっていて、番号がわからない。下の姉が、がま口のついた黒財布を見つけて、「中に鍵が入っとるよ」と言って持ってきた。その中の一つが金庫のカギ穴に入った。ゆっくりと慎重に回してみる。「カチャッ」と開いた。ダイヤルはセットされていなかった。
金庫の中には実家の権利証が入っていた。初めて目にするものだった。登記の日付けは昭和38年となっていた。父が亡くなって自分の名義に登記されたときのものだった。ほかにも、何通かの権利証が入っていた。全部で6冊あった。
実はそのときには権利証の必要性がよくわかっていなかった。実家の名義は土地も建物もすべて自分の名義になっていた。権利証はなくても登記簿謄本をとれば売却はできると思っていた。
権利証がなにゆえに必要なのか、それを知るのはもう少し後になってからだった。