昨年の7月に「実家を下見させてください」という人が来たときに、「名義が書き換えられているのは田舎では珍しい」と言われたことがあった。
そのときは単純に、「実家の土地や建物が先祖の名義のままで、亡くなった後も書き換えられていない」という意味に受け取っていたが、それから半年近くがたって別の意味があったのだと思うようになった。
それは、「保存登記」ということだった。
実は、実家の登記済証の中に「保存登記」を目的とする登記があった。初めてそれを見たときは、保存登記とはどういう意味か、全くわからなかった。しかし、そのときは自分名義になっている登記済証がみつかったことに満足し、「まあいいか」と放っておいていたのだった。
それから半年近くたって、ふと「保存登記」のことを思い出し、ネットで調べてみた。
土地は、明治以前から租税の基礎とされてきた。また、土地の取引も認められてきたので、土地の所有者の名義は比較的早くから登記されてきた。一方、建物については、昭和になってからだった。そのときに、建物の物理的状況(所在地・地目・地積)と所有権とが登記されることとなったが、所有権に関しては、登記してもしなくてもよかった。そして所有権の登記のない不動産について最初に行う登記のことを「保存登記」といった。
したがって、実家の建物の登記の目的が「保存登記」だったということは、建物の所有権が、父親が亡くなって自分の名義で登記されるまで、全く登記されていなかったということになる。
ちなみに、横浜の自宅を購入したときはどうだったのか?
全く記憶がなかった。
これもネットの情報になるが、マイホームを買うときにローンを組むと、建物に抵当権が設定されるので、その前提として所有権の保存登記がされる。そういう仕組みになっているということだった。すべては司法書士さんがやってくれている。謄本をとらない限り自分ではわからない。
というような訳で田舎の物件では、先祖の名義のまま書き換えられていないものや、建物の所有権の保存登記が行われていないものがある。
「建物の名義はどうなっていますか?」
「名義が書き換えられているのは珍しいですね」
そういう意味のコメントだったのだ。