墓を解体撤去してくれる石材店は地元に2店あった。それだけでは心もとないので、少し遠方にはなるが、市内の業者でできるだけ実家に近い業者を調べて1店追加し、やってくれるか電話をかけて聞いてみた。
地元の2店はすぐに見積もりを出すと言ってくれた。しかし、市内の業者は、頼まれれば行きますよ、と言う程度で、あまり熱心でない印象だったので、早々にお断りした。
地元の2店のうち1店からは、すぐに見積もりが送られてきた。しかし、そこに書かれた金額をみてびっくりした。相場の3分の1の金額が書いてあった。思わず「本当?」と言ってしまった。本当にこの金額でできるのだろうか?
別の1店からは、なかなか見積もりが出てこなかったが、1週間たってようやく送られてきた。実家のお墓の現地確認に手間取ったようだった。その業者が出した見積もりはほぼ相場どおりの金額だった。
2つの見積書を前にして私は迷った。金額が違いすぎる。価格だけなら断然安い方の業者だが、安すぎるのが気になった。以前、ネットで、解体撤去された墓石が不法投棄されているという情報を見たことがあった。
そこで、相場並みの金額を提示してきた業者に、ざっくばらんに聞いてみることにした。
「別の業者さんが〇〇万円でやると言ってきているんですが、どう思いますか?」
「えっ?うちではとてもその金額は出せません。今回は私が店主になって初めての仕事なので、なんとか頑張ってみますが、それでも2割引いた額がギリギリです」
電話で話しているうちに、この店主の話しぶりからその人柄を信じる気になっていた。この人だったら、墓石を不法投棄することもなくきちんと処分してくれるのではないかと。
念のため、どのように処分するのか聞いてみた。すると、〇〇家の墓などと彫ってある墓の一番上に載っている竿石の部分は、不要になったお墓を安置する場所に運び、そこから最終的には関西の専門業者のところに運ばれて処分される。竿石より下の台石の部分は、産業廃棄物として処分されるということだった。
始めから全部粉砕して道路砕石にでもするのかと思っていたが、違っていた。
それを聞いた私は安心して店主に返事した。
「御社にお願いすることにします。金額は見積もりの金額で結構です。ただし、端数をとって、振込手数料込みということで」
店主は、「えっ?うちでいいんですか?」「どうしてですか?」と驚いていた。