墓じまいするには改葬の許可申請が必要だった。改葬先の霊園を探していたときに、業者から送られてきた「墓じまいガイドブック」にそう書かれていた。
実家のお墓から遺骨を取り出して、別の場所に埋葬するには、地元の役場に改葬の許可を申請して、許可証を発行してもらう。それを改葬先の墓地を管理している会社に提出しないと、その墓地に埋葬することができないという仕組みだった。
根拠となる法律は、「墓地、埋葬等に関する法律」といい、その中の条文が次のようになっていた。
「第5条 埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。)の許可を受けなければならない。」
この中にある「火葬」という言葉をみて初めて気づいたのは、母の遺体を火葬に付したときの火葬許可証も、これに基づいて交付されたものということだった。
あのときは、法律のことなんか考える余裕がなくて、葬儀場の担当の人に言われるまま書いて出しただけだった。
ちなみに、最近はやりの散骨は、この法律では規定がなく、グレーゾーンの扱いになっているらしい。
もう一つわかったのは、墓地を設けるときには、それが自分の土地であっても、都道府県知事の許可が必要ということだった。
実家の墓地は、父が生前に、それ以前の墓地を今の場所に移して建てたものだった。祖父が亡くなったのが昭和25年だから、おそらくそのすぐ後のことと思われる。果たして父は墓地の設置の許可をとっていたか?
役場で改葬の手続きについて相談したときに、そのことを問われ、役場の人に調べてもらったところ、許可は取られていないようだった。父もまさか自分の土地に墓を建てるのに許可が必要とは考えなかったのだろう。法律的には違法ということになるらしいが、個人が山の中の自分の土地に建てた墓地ということで大目に見てもらった。
それでは、遺骨を埋葬するのにも許可が必要なのではないか?
担当者にそう尋ねると、「火葬するときに許可を出しているので、焼いた遺骨を埋葬するときに許可はいらない」という回答だった。この法律では、埋葬とはいわゆる土葬のことをいい、火葬された遺骨を墓に埋めるのは埋葬するとは言わない。つまり、遺体は埋葬、焼いた遺骨は埋蔵ということになる。
そのようなことが分かったところで、申請書の様式を送ってもらうことにした。